制作雑記① Tacam R-2編

Tacam R-2は大戦中にルーマニア軍が開発した自走砲です。チェコのシュコダ製R-2(ドイツ軍でいう35(t))をベースに開発された、いわばルーマニア版マーダーです。チェコ製の38(t)や35(t)が好きなこともあり、昔から気になっていたアイテムですが、残念ながらキットには恵まれませんでした。一時期35(t)シリーズを積極的にリリースしていたチェコAttack社からリリースが予告され、心待ちにしていたのですが、その後音沙汰内がないまま企画自体が消滅してしまいました。

こうなると、後はスクラッチするしかないですが、Attackの35(t)の組みにくさ、車体上部構造の高さ不足などの問題に加え、主砲となるソ連76.2mm砲(ラッチュ・ブム)をどうするかなど課題が山積し、なかなか手がつけられないまま時間が経過しました。

しかし、待てば海路の日和あり、とはよく言ったものです。First to Fightから気軽に楽しめて精度の高い35(t)キットがリリースされました。この間、廃業前のMMS社から76.2cm砲を入手できたこともあり、今回、これを組み合わせて念願のTacam R-2の作成に挑戦してみることになりました。

作業の中心は車体上部 戦闘室の作成になります。写真等を参考にしながらプラバンを切り出し、すり合わせて形にしていく地味な作業です。MMSのラッチュ・ブムは出来が良いので、あっという間に組みあがります。これと現物合わせをしながら細部を調整していきます。寸法はあっているはずなのに、後で車台と組み合わせるとバランスがおかしい事がよくあるので、ドキドキしながらの作業になります。この車両の特徴に戦闘室の内壁にびっしり設置された砲弾ラックがあり、プラ棒とプラペーパーにより再現しました。

車体下部の方はFtFのお陰で極めて楽な作業になります。今回はせっかくのオープントップなので、車内も再現してみることにします。以前入手していたAttackの35(t)シリーズに限定のUpgrade版というものがあり、車内等を再現したレジンパーツが付属します。今回は、これをFtF製の車台に組み込んでいきます。すり合わせの作業はそこそこ手間ですが、何とか組み込むことが出来ました。

出来のよいFtFですが、最大の欠点が車体正面装甲です。一体成型のため、この部分だけモールドが甘く、リベット等がオミットされてしまっています。リベットの再生も考えましたが、このスケールの35(t)では難しいため、Attackのパーツを流用することにしました。パーツを移植するため、該当部分をカットします。併せて、tacamに改造するために上部もカットしています。

諸々の作業が終わり、組み合わせた段階です。ここまで来ると、完成後の姿がイメージできるようになり、俄然モチベーションが上がってきます。砲弾ラックは車体下部にも3発分設置されていたようですので、追加しておきます。エンジンが見えなくなってしまうのは残念です。ブカレストに現存する車体には機関室の隔壁がないようですが、それが標準仕様とも思えないため、隔壁がある形にしてあります。

さて、これで概ね完成です。あとは、手すり等の細部を追加するのと、塗装後に上部と下部を接着して接合部等の調整する作業が残っています。完成後は、tacam T60ドイツ軍の同じコンセプトの自走砲などと並べて展示することになるのだな、などと考えながら、しばしの達成感に浸ることになります。

サーフェイサーを吹くと、いよいよ完成間近という気分になります。今回のように金属、レジン、プラと複数の素材を使用する場合には大切なプロセスです。この後は、レッドブラウン+ブラックで下塗りした後、車内を塗装してから上下を接着したうえで基本塗装作業という段取りになります。下の右端が基本塗装を施した姿ですが、まるでペンキ塗りたてのおもちゃのようです。

ウオッシング等の作業を経てようやく完成です。あとはフィギュアを乗せる作業が残っています。ルーマニア軍の軍装は資料が少なく、色味はイメージ優先にしています。普段は作成で精一杯で、過程を記録する余裕はないのですが、今回はセミスクラッチ作業ということもあり、珍しく作成記として残すことにしました。いずれ、またやってみたいと思います(2021.1記)